「ちっこいとおおきい」




アタシは、ちっこい人が好き。
おっきい人は嫌い。

アタシはちっこい人。
アタシよりちっこい人を見つけるのは難しい。

ねえ、上から見下ろさないで。
頭をなでないで。
可愛くないもの。

「アタシは大人だよ!」

アタシは駆け出した。

アタシがよく来る場所。
秘密基地。
おっきい人に、壊されては作り直した。
誰にも秘密の秘密基地。

秘密基地には不思議な事が、ひとつある。

アタシが泣いてここに来るとき、必ずミカンが置いてある。
アタシはミカンを洗って食べる。
とても甘い。
誰にも秘密の秘密基地。

だけど今日は違ってた。

ミカンはなくて、代わりにおっきい人が追っかけてきた。
誰にも秘密の秘密基地。

なのに。

おっきい人はミカンを持ってた。

「ごめん」

それだけ言うと、おっきい人は戻っていった。

おっきい人のミカンは
いつもより甘くて
いつもより美味しかった。

アタシは嫌いなはずのおっきい人を探す。
一つの袋を持ちながら
いっぱい走って、
いっぱい泣いて、
いっぱい聞いた。

おっきい人は、誰にも秘密の秘密基地に居た。

「ありがとう」

アタシはお礼を言った。
手に持ってた袋を渡した。
ミカンいっぱいの袋を渡した。

「ここ、なくなるんだ」

アタシはカレにそう言った。

「うん」

カレは少し哀しそうだった。

アタシ達は、ミカンを食べた。


アタシは大人になって、私になった。
彼も一緒に大人になった。
私は、おっきい人が好きになった。

私は近くの店で一袋のミカンを買った。
これから行く所は一つ。

‘モト’

二人の秘密の秘密基地に。

「好きです。」

彼は嬉しそうに笑ってくれて、私にミカンを差し出した。

「僕も好き“だった”」


彼も一緒に大人になった。
彼はもうすぐパパになる。
私の子ではないけれど…

彼は嬉しそうだった。
私はそれだけで、嬉しかった。

「うん。ありがとう」

私は泣くまいと頑張ったけど、やっぱり泣き虫で泣いてしまった。
私達はミカンを食べた。

私は相変わらずちっこいけれど、おっきい人も好きになった。
頭をなでられるのは嬉しくなった。

彼がパパになるように、私も本当の大人になろうと思う。

新しい恋もしようと思う。

いつか娘とここに来よう。
そうして一緒に





みかんを食べよう。


                  ■あとがき
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