「桜木町の赤ん坊」

桜木町には桜があった。

「桜木町なのに桜がないのは変だ」
ってあたしが言ったら、ばあちゃんが次の日接ぎ木したんだ。

ばあちゃんは何でも出来る、あたしの自慢のばあちゃんだ。
あたしは五人兄弟の中間に生まれた。
妹弟いて、姉兄もいるから、目立つことなんてひとつもないあたしだったんだけど、
ばあちゃんはあたしを一番に、相手してくれた。

ばあちゃんは強かった。
ばんばん働くし、畑も耕す。
買い物に出掛て帰ってきて、何かを作ったと思ったら、また出掛けて
ついには熊を倒してつれて帰ってくるもんだから、誰かに心配されることはなかった。

だから母ちゃんは見習ってたし、父さんはわかんないけど、妹弟は怖がって姉兄は面白がった。

ある日、ばあちゃんは起きることなく寝続けた。
あたしはついに死んだのかと思った。

そしたらばあちゃんムクって起きあがって、
かくれんぼするっていい始めた。

その日は、ばあちゃんの60歳の誕生日だった。

だから、ずっと寝てたらしい。かくれんぼしたがったらしい。
何でも60になるってことは赤ん坊に戻らなければいけないのが常識なんだとばあちゃんは言った。

そんなん言ったら、超高齢化社会になる日本は赤ん坊だらけってことになるじゃないか。

「だからな、沢山の親がいれば問題ないんだよ」

ばあちゃんはそう言うと、また寝転んだ。


                  ■あとがき
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