「詩」

事の発端は確か、20分休みの会話だった。

私は、教科書に書かれた詩を作ろう!なんて文字を見ながら

あの日のことを思い出していた。



あのね。先生、私は毎日たぬきに会うの。

いつも帰り道に必ず一匹のたぬきがいてね

「またね」って祈りながら通ってるのよ。

私は先生にお話した。

‘話しかけないの?’

先生が聞いた。

だって、こわがらせて、その場所に二度と来なくなったら嫌だもの。

私、たぬきさんの居場所はだんだんなくなってるっておばあちゃんに聞いたの。

だから話しかけたいけど我慢してるの。

‘うそだぁ!オレたぬきは居なくなったって母ちゃんに聞いたもん!’

クラスの男子が会話に入ってきた。

嘘じゃないわ。確かに居るもの

‘じゃあ、見せてみろよ’

それは・・・

‘ほら、嘘じゃないか!’

違うよ!じゃ、じゃあ、見せるわよ!!

‘よし。決まり!みんなで見に行こうぜ!’



そんなこんなで、いつもの帰り道。

いつもと違うのは、1人じゃないってこと。

クラスのほぼ全員が私の後ろを歩いていた。

先生は私に対する申し訳なさからか

‘寄り道は駄目です’

なんて言ってたけど。

この冒険大好きクラスのメンバーが素直に聞くわけもなく、

クラスのほぼ全員が、今に至る。

こんな事になるなんて、言わなきゃ良かったな。

私は少し憂鬱だった。

先頭を歩くのは、もちろん、言いだしっぺの悠希だった。

‘次、どっちだ?’

道が分からないなら、先頭なんか歩かなければいいのに。

‘左’

あぁ、もう少し。もう少しで着いちゃうよ。

‘そろそろ?’

もう、私はいっそ嘘の道を教えて迷子になりたいくらいだった。

けど、もう隠しようがなく私はしぶしぶ言い切った。

‘・・・ここだよ’

やっぱり、今日もたぬきはいつもの場所に居たからだ。

‘すっげぇー!!’

‘マジでオレはじめてみた!’

‘わーかわいいー’

どうか、その台詞だけで終ってくださいと願っている私の横で。

その願いを、槍の速さで打ち砕くという超ハイパー能力をもった悠希が

たぬきをマジマジと見つめていた。

大体次の言葉は予想がつく。

‘触っていいかな’

‘だめだよ’

聞いといて返事を聞かないという荒業に出る悠希。

‘大丈夫だろ。これくらい’

悠希が触ろうとした瞬間。

一目散に逃げていくたぬきさん。

‘ほらぁ!逃げちゃったじゃない・・・!’

‘すぐ、戻ってくるって’

本当かよ・・・

反省の色をまったく見せない悠希。

私は思いっきり悠希を睨んだ。

‘最低っ!!!’


それから二度とたぬきは戻らなくなってしまった。



たぬきさんが消えてから三日後のことだった。

あの日、一緒にたぬきを見に来たクラスメイトの一人が

大慌てで私のところに来たのである。

‘りかちゃん大変っ!!’

それは、たぬきさんが見つかったのとの報告だった。

ただし、眠った状態で・・・

‘りかちゃん・・・’

‘・・・んでよ・・・’

悠希もその場で、動かなくなった、たぬきをひたすら見つめていた。

‘ねぇ!悠希!なんでよ!!’

‘りかちゃん!’

‘しらねーよ!!’

私はひたすら泣くしか出来なかった。

だって、この間まで生きていたのに。

固まって、もう動かない。

なんて動物の死に方はあっけないものなんだろう。

‘・・・だから言ったのに・・・’

私たちはクラス全員でお墓を作った。



それから先生は、教室にダンボールを運んでから、私たちに、こんなお話をはじめた。

‘みんなは、なんで友達なったのかしら?’

次々に手が挙がる

‘はい。先生。趣味が一緒だったからです。’

‘はぁーい!可愛かったから!!’

‘このスケベっ’

なんで先生はこんな話をしたんだろう。

先生は、よく質問をした後に説明をし始める。

今日も私は先生の説明を待ち続けた。

‘実はね。先生はずっと今も、この答えを考え続けているの。

なんで人は出会わなくちゃいけないのかしらって。’

‘そんなの!その方が楽しいからに決まってんじゃんー’

‘ふふ。そうね。でも、いつかは、みんな死んでしまうのよ。’

・・・・・・みんなの頭の中にもきっと、さっきの光景が思い浮かんでいるのだろう。

一気に教室が静まった。

‘じゃあ、何故、出会うのかしらね。’

人は1人じゃ生きていけないというけれど、何故、1人じゃ生きていけないのかな。

そんなことは当たり前すぎてちっとも考えはしなかった。

先生は言う。

‘人はやがて子供を作るの。好きな人と結婚して子供を授かるのよ。

それは他の動物においても同じこと。みんなが見たたぬきだって子供を作るわ。

でも、その為には、いい人と出会わなければいけないの。’

‘難しい話ですね’

‘そう。そして子供が生まれても、人はあまり長く生きられないの。

たぬきもそうよ。でも、幸せなのよ。好きな人がいて、愛する子供も生まれたんだから’

先生はダンボールをあけながら続ける。

‘たぬきが死んじゃったのは、決して、みんなのせいじゃないのよ。

寿命だったの。でも最後に最高に幸せだったと思うわ。’

ダンボールの中に居たのは・・・たぬきの赤ちゃんたちだった。

‘近所の方のお庭にいらしたそうよ。

でも、お父さんたぬきは先日、みんなの知ってる

たぬきさんと一緒に亡くなっていたのを発見されたわ。’

その言葉を聞いたときに、それまで黙っていた悠希が口を開いた。

‘先生、この子たち僕らで育てられないかな・・・?’

‘・・・大変だと思うけど・・・’

‘うん。分かってる。でも・・・みんな、協力してくれないか?’

悠希はみんなを見回す。

誰も反対したりはしなかった。

‘先生。お願いします。’

‘・・・頑張りなさいね。’

先生は嬉しそうだった。

クラスが一気に明るくなる。

私も・・・嬉しかった。

‘よし、じゃあ!今日はりかのばあちゃん所に行こう!詳しそうだしな!’

‘え!?’

‘りか!頼む!’

あの、悠希に笑顔で頼まれたら断れない。

私はしぶしぶ、あの冒険大好きクラスのメンバーを引き連れて再び帰り道を歩くのだった。

ただこの間と違うのは、心は晴れ晴れとして。



ポンポン

たぬきさん。

ポンポン

お元気ですか?

また、いつか逢いましょう。

6年2組 山越 りか



「出来た。」

私は自分の詩の才能のなさに少々ため息をつきつつも

この課題を渡すために学校へ向かった。



                  ■あとがき
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